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このページの目的
- 社債発行の流れを理解すること
- 社債発行の注意点を理解すること
1 社債発行の流れ
社債は、公募債と私募債に分かれます。私募債はさらに、プロ私募債、少人数私募債、銀行引受私募債に分かれます。このうち、中小企業も利用しやすい少人数私募債を例に社債発行の流れを解説します。
少人数私募債は、募集人数が50人未満の社債発行です。社債の引受人は、社長の親族、友人、知人、会社の取引先、取締役、従業員といった縁故者が対象になります。
少人数私募債の流れは下のようになります。
少人数私募債の流れ
- 募集事項の決定
- 取締役会での決議
- 募集事項の通知
- 募集社債の申込み
- 募集社債の割当と払込み
① 募集事項の決定
社債発行を行う場合は、下の募集事項を決める必要があります(会社法676条)。投資家はこの募集事項を参考にして、投資をするかどうかの判断をすることになります。
- 募集社債の総額
- 各募集社債の金額
- 募集社債の利率
- 募集社債の償還の方法及び期限
- 利息支払の方法及び期限
- 社債券を発行するときは、その旨
- 社債券の記名式と無記名式の相互転換(698条)を制限する場合には、その旨
- 社債管理者が社債権者集会の決議によらずに訴訟行為又は破産更生手続等に属する行為をすることができる(会社法706条1項2号)ときは、その旨
- 各募集社債の払込金額もしくはその最低金額またはこれらの算定方法
- 金銭の払込みの期日
- 打切発行としない場合には、その旨およびその一定の日
- その他、法務省令で定める事項
② 取締役会での決議
取締役会設置会社の場合、①の募集事項の決定は取締役会の専決事項ですので、取締役会での決議が必要になります(会社法362条4項5号)。取締役会を設置していない会社の場合には、取締役の過半数の決定(会社法348条2項)または株主総会の決議(295条1項)により、募集事項の決定を行います。
③ 募集事項の通知
募集事項の決定が決議されたら、会社は社債引受人に下の事項の通知を行います(会社法677条1項)。
- 会社の照合
- ①の募集事項
- その他、法務省令で定める事項
④ 募集社債の申込み
社債の引受けの申込みをする者は、下の事項を記載した書面を会社に交付する必要があります(会社法677条2項)。
- 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
- 引き受けようとする募集社債の金額及び金額ごとの数
- 会社が最低金額を定めたときは、希望する払込金額
なお、通常は、③の募集事項の通知が郵送等されてくる際に、この申込書も同封されてきますので、記入して返送することになります。
⑤ 募集社債の割当と申込み
会社は、申込者の中から募集社債の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集社債の金額及び金額ごとの数を定めます(会社法678条1項)。
2 社債発行の注意点
① 他の資金調達手段も検討する
社債発行には、「資金調達の方法〜社債発行とは〜」のページで解説したようにメリットとデメリットがあります。社債発行のメリット・デメリット及び融資などの他の資金調達手段のメリット・デメリット等を総合的に判断して、自社にとって最適な資金調達手段を検討する必要があります。
② ケースによっては専門家に相談する
社債発行は、株式発行と同様、会社法で色々と定められていますので、手続きが複雑です。
ケースによっては、弁護士や公認会計士等の専門家に相談することも検討する必要があります。