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このページの目的
- 融資をおすすめするケースとおすすめしないケースを理解すること
融資には、手形割引、手形貸付、証書貸付、当座貸越の4つの形態があります。融資の目的によって、どの形態の融資を受けるか変わってきます。それぞれの形態のおすすめするケースとおすすめしないケースを解説していきます。
1 手形割引
手形割引とは、商品販売やサービス提供の対価として受け取った約束手形や為替手形を支払期日が到来する前に、銀行・信用金庫などの金融機関(以下、金融機関)や手形割引事業者で現金化することをいいます。
手形は、原則、期日が到来するまで現金化できません。しかし、金融機関や手形割引事業者に割引手数料を支払うことにより、早期に現金化することができます。
① おすすめするケース
運転資金の確保が厳しい場合
手形割引は、早期に換金することができるため、運転資金の確保が難しい場合には、有用な資金調達手段になります。
例えば、モノを買掛金で購入して、買掛金の支払日が手形の期日よりも先に到来するケースでは、運転資金がショートする可能性があります。この対応策として、手形を割引くことにより、早期に運転資金を確保できます。
プロパー融資が受けられない場合
自社の返済能力がなく、金融機関からプロパー融資を受けられなかった場合にも、手形割引による資金調達は可能です。手形は振出人の信用力が重要ですので、自社に返済能力がなくても、振出人に信用力があれば、利用しやすくなります。
② おすすめしないケース
資金に余裕がある場合
手形割引は、手形の期日到来前に現金化できるというメリットがありますが、割引料を差し引いて現金を受け取ることになるため、実質的に割引料を支払っていることになります。
金融機関よりも手形割引事業者の方がスピーディーに現金化できるケースが多いですが、その分、金融機関よりも割引料は高くなりがちです。そのため、資金に余裕がある場合には、一般的には、期日まで保有しておいた方がよいと考えられます。
また、いったん手形を割り引くと原則として買い戻しができませんので、手形を割り引いた後で現金に余裕ができたといっても、基本的には買い戻せませんので注意してください。
2 手形貸付
手形貸付は、自社の約束手形を振り出して担保にする融資のことをいいます。
約束手形は、期日までに手形に記載された金額を支払う有価証券です。
元本と利息を一緒に振り出しておいて、利息を引いた元本部分の現金を受け取るケースが多いようです。
手形貸付で融資を受けたい場合には、当座預金口座の開設が必要ですので、金融機関の審査が必要になります。
① おすすめするケース
短期運転資金を必要とする場合
短期運転資金を必要とする場合、手形貸付による資金調達が有用です。
建設業などで多く見られる資金調達手段ですが、建設工事は、工事が長期間になり、数ヶ月かけて工事した後に工事代金を受け取ることになります。
この場合、その前に資材の仕入れ代金、人件費等の支払いが必要になりますが、手元資金がない場合に、これらの費用に係る資金を手形貸付で借りておいて、工事代金が入金されたら、手形貸付を一括返済する方法が採られます。
建設業以外でも、経費の支払いが先に到来し、売上代金が後からまとめて入ってくるような場合には、有用な資金調達手段になります。
短期転がしを必要とする場合
短期転がしを必要とする場合も手形貸付による資金調達が有用です。
メーカーや商社などの業種で、一定の在庫を必要とする場合、販売代金の回収の都度、返済していたのでは、次の仕入れの時の仕入れ代金が支払えなくなる可能性があります。
この場合、約束手形の期日に再び約束手形で融資を受ける方法(短期転がしと言います)が採られます。約束手形は短期の資金調達手段ですが、約束手形の書き換えを継続することにより、実質的には長期融資になります。
② おすすめしないケース
自社の信用力が低い場合
自社の信用力が低い場合には、金融機関の審査が通りにくくなります。約束手形は、振出人である自社の信用力を拠り所としています。信用力が低い会社の約束手形は、不渡りとなる可能性があり、そのリスクは金融機関が負うことになります。
そのため、自社の信用リスクが低い場合には、審査に通りにくいのです。この場合、他の資金調達手段を検討することになります。
3 証書貸付
証書貸付は、会社が金融機関と金銭消費貸借契約を結んで、借用書によって受ける融資のことをいいます。金融機関の貸借対照表を見れば分かりますが、融資の中で、証書貸付が圧倒的に多いです。信用保証付き融資、プロパー融資、ビジネスローンは、通常、証書貸付により行われます。
証書貸付は、1年以上の長期にわたって受ける融資ですので、審査では長期間の返済能力が判断材料となります。
① おすすめするケース
新規事業や事業拡大など多額の資金を必要とする場合
証書貸付は、通常1年以上の長期間にわたって受ける融資です。新規事業や事業拡大は、通常、多額の資金を必要としますが、多額の融資を短期間でまとめて一括返済することは難しいため、このような場合は、長期間にわたって約定返済できる証書貸付が有用な資金調達手段となります。
特に、信用力のある会社が多額の資金を必要とする場合は、信用保証協会の保証を受けないプロパー融資により融資を受けるケースが多いようです。
貸出条件を柔軟に対応してほしい場合
証書貸付は、金銭消費貸借契約の中で、融資期間、金利の変動固定等の貸出条件を決めていきます。会社と金融機関との契約による融資ですので、金融機関の合意があれば、貸出条件を柔軟に対応してもらえるメリットがあります。
貸出条件の柔軟な対応を求めている場合には、有用な資金調達手段になります。
② おすすめしないケース
資金調達にスピード感が必要な場合
証書貸付は、一般的に融資実行まで時間がかかるといわれています。貸出条件の決定や準備する書類の多さや保証人の確認、担保の現物確認や担保評価に時間がかかるため、融資実行に時間がかかります。
そのため、早期に資金調達したい場合には、証書貸付のみで融資を受けることはおすすめではなく、例えば、証書貸付が実行されるまでの間、手形貸付によるつなぎ融資を実行しておくことも検討する必要があります。
4 当座貸越
当座貸越は、総合口座の普通預金残高が不足した場合に、定期預金や国債などを担保として自動的に借り入れができる方法です。通常、残高ゼロを超えて引き落とし等はできませんが、あらかじめ決められた極度額の範囲内で借り入れることができます。
① おすすめするケース
資金調達のスピード感を求める場合
当座貸越は、あらかじめ決められた極度額の範囲内で、自由に借り入れができるため、すぐに資金が必要になった場合でも柔軟に対応できます。そのため、すぐに資金が必要な場合には、有用な資金調達手段になります。
② おすすめしないケース
自社の信用力が低い場合
当座貸越は、あらかじめ決められた極度額の範囲内で自由に借り入れができるため、金融機関からするとリスクになります。そのため、信用力の低い会社は、審査に通りにくくなる可能性があります。
まとめ
まとめると、下の表のようになります。
自社の信用力が低い場合には、資金調達の手段が限られてきますが、本当に資金が必要な会社は、信用力が低い会社が多いのが現状です。金融機関や顧問公認会計士、税理士等と相談して、自社に最適な資金調達の工夫をしていくことが大切です。
おすすめするケース | おすすめしないケース | |
手形割引 | ・運転資金の確保が厳しい場合 ・プロパー融資が受けられない場合 |
・資金に余裕がある場合 |
手形貸付 | ・短期運転資金を必要とする場合 ・短期転がしを必要とする場合 |
・自社の信用力が低い場合 |
証書貸付 | ・新規事業や事業拡大など多額の資金を必要とする場合 ・貸出条件を柔軟に対応してほしい場合 |
・資金調達にスピード感が必要な場合 |
当座貸越 | ・資金調達のスピード感を求める場合 | ・自社の信用力が低い場合 |