キャッシュフローを見える化する必要性と資金繰り管理の方法

このページの目的

  • キャッシュフローを見える化する必要性を理解する
  • 資金繰り管理の方法を理解する

1 キャッシュフローを見える化する必要性

キャッシュフロー(「資金」と同義)を見える化することは、黒字倒産を防ぐために必要です。黒字倒産は、名前の通り、黒字が出ているにも関わらず、資金ショートにより倒産することをいいます。

利益が出ていれば、儲かっているということですので、普通、資金ショートを起こさないはずですよね?しかし、特に、昨今の資源価格の高騰や気候変動など不安定な外部環境下では、資金繰りの管理をしっかりとやっていないと黒字倒産のリスクも十分に考えられます。

これまでの会計監査の経験から、中小企業でしっかりとした資金繰りの管理をしている会社は、ほとんど見たことがありません。そもそも資金繰り表を作成していない会社や、資金繰り表を作成していたとしても、単に作成しているだけで資金が増加している原因、減少している原因を分析していない会社は非常に多いです。

その結果、利益が出ているのに、資金ショートして倒産した会社を見てきました。そのため、資金繰り管理をしっかりとやっていかなければならないわけですが、資金繰り管理は、キャッシュフローを見える化することと、キャッシュフローを分析することです。

下の「2 資金繰り管理」でそれぞれ説明していきます。

黒字倒産の原因

黒字倒産は、利益の構成要素である収益費用と現金の収入支出は必ずしも同じタイミングで計上されないため起こります。

例えば、モノを掛け(後日入金)で販売した時、以下の仕訳をします。

(借方)売掛金  100  /(貸方)売上高  100


この時、売上高が100計上されますので、他の取引が何もなければ、利益が100出ますが、掛けでの販売のため100の入金は後日になります。利益が出ているのに、会社にお金がない状態ですよね。

このように、利益の構成要素である収益費用と現金の収入支出は必ずしも同じタイミングで計上されないですので、資金ショートして黒字倒産が起こるのです。

2 資金繰り管理

① キャッシュフローの見える化

詳細な資金繰り表を作成できれば、それに越したことはないですが、詳細な資金繰り表を作成していない会社は、これから説明する下図のキャッシュフロー計算書を作成するだけでも、しっかりとキャッシュフローを見える化できます。

この計算書は、「本当に必要な管理会計の仕組みを構築するメリット」のページで説明した損益計算書からスタートするため、作りやすい、分かりやすいというメリットがあります。作成するにあたってのポイントをお伝えしますので、ぜひお試しください。

図1 キャッシュフロー計算書

  調整前 未収未払調整 減価償却調整 借入返済 調整後
売上高 1,000 △ 90     910
− 材料費 480 30     510
− 変動労務費 60 10     70
− 外注加工費 40 △ 20     20
− 外注物流費 30 △ 10     20
− 在庫金利 10       10
=付加価値 380       280
           
− 固定労務費 100       100
− 減価償却費 90   △ 90   0
− 事業資金の金利 20       20
=利益 170       160
− 借入返済       50 50
返済後キャッシュフロー         110

作成するにあたってのポイント(Excelを使うことを想定しています。)

  1. 「調整前」の列は、費用項目であっても全てプラス値で入力してください。

    付加価値と利益の算出は、数式を使って費用項目をマイナスさせてください。数式の使い方が分からなければ、Googleで検索すると参考になるページがたくさん出てきます。

  2. 次に、「未収未払調整」の列で、未収未払の調整を行います。

    多くの会社が掛けでの販売、購入をしていますので、収益費用の計上よりも入金出金のタイミングは遅くなり、損益計算書とキャッシュフロー計算書とはズレが生じます。このため、売上高に係る売掛金、原材料に係る買掛金、変動固定労務費や外注加工費や外注物流費や金利に係る未払金などの未収未払を調整する必要があります。

    ここでの調整は、「月頭の未収未払の残高−月末の未収未払の残高」で計算し、プラス値ならExcelにそのまま入力、マイナス値からExcelにマイナス入力します。

  3. 次に、「減価償却調整」の列で、損益計算書に計上した減価償却費と同額をマイナス入力します。

    減価償却は、過去に投資した固定資産について、投資した以降の期間に徐々に費用化していく会計的な方法です。減価償却費は投資した以降の期間に費用として計上されますが、現金は過去に支出していますので、減価償却費を計上した期間に現金支出はありません。

    このため、費用として計上した減価償却費をなかったことにしてあげれば良いわけですので、「減価償却調整」の列で損益計算書に計上した減価償却費と同額をマイナス入力します。

  4. 最後に「借入返済」の列で、銀行から借り入れている借入金の返済額を差し引けばキャッシュフロー計算書の完成です。

上で説明した調整項目は、「未収未払調整」、「減価償却調整」、「借入返済」という代表的な3項目だけでしたが、他にも、例えば、設備投資をした場合には「設備投資」の調整項目も考慮した方が良いですので、随時、調整項目を見直し、キャッシュフローを見える化していくことが重要です。

調整項目のポイント

キャッシュフロー計算書では何を調整したら良いのか最初は分かりにくいですので、基本的な考え方をお伝えします。

  • まずは、「未週未払調整」や「減価償却調整」のように収益費用の計上時点と入金出金の時点がズレる項目を調整します。
  • 次に、「借入返済」や「設備投資」のように直接入金と出金がある項目を調整します。

    直接入金と出金がある項目には、商製品の販売の入金や原材料の仕入れの出金は含まれませんので、ご注意ください。

    なぜなら、キャッシュフロー計算書は、損益計算書からスタートしますので、商製品の販売や原材料の仕入れは損益計算書に計上され、さらに、①の収益費用の計上時点と入金出金の時点がズレる項目として調整されるからです。

② キャッシュフローの分析方法

上の図1のキャッシュフロー計算書は、1回作成したらそれで終わりではなく、例えば、月次や週次の頻度で作成する必要があります。資金繰りを把握するという目的からすると、作成の頻度は多い方が良いですが、費用対効果を考えて、自社で最適な頻度で作成をすると良いでしょう。

また、キャッシュフロー計算書は単に作成するだけでなく、キャッシュフローが増加している原因、減少している原因を分析する必要があります。分析方法はいくつかありますが、私がよく実施する分析は、図1のキャッシュフロー計算書の一番右の「調整後」の列を直近1年分、月ごとに並べて分析する推移分析をします。

これにより、増加減少傾向の原因を把握することが容易になりますので、参考にしてみてください。

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