原価改善(原価低減)の事例と原価改善をおすすめするケース

このページの目的

  • 原価改善や原価低減の事例とおすすめするケースを見て、自社でも対応できないか検討する。

1 原価改善(原価低減)の事例とおすすめのケース

会社が強く存続するためには、付加価値の最大化を目指す必要があります。原価改善や原価低減は、付加価値を最大化するために必要な活動です。

そこで、このページでは、「本当に必要な管理会計の仕組みを構築するメリット」のページで取り上げた、下の図の損益計算書のそれぞれの費目ごとに原価改善(原価低減)の事例を紹介していきます。

材料費、変動労務費、外注加工費、外注物流費、在庫金利は、変動費です。変動費は、基本的には外部から購入してきたものに払う費用です。外部に払う費用は少ない方が良いですので、変動費の管理方法はコストダウンになります。

一方で、固定労務費、減価償却費、事業資金の金利は、固定費です。固定費は、いわゆるヒト・モノ・カネという会社の資源を獲得するための費用です。資源は当然有効活用すべきですので、固定費の管理方法は生産性向上になります。

原価改善(原価低減)というと、一般的には、変動費のコストダウンを意味しますが、固定費の生産性を向上させることによって、結果として変動費及び固定費が削減されますので、変動費はコストダウンの観点から事例を紹介し、固定費は生産性向上の観点から事例を紹介します。

売上高 1,000
− 材料費 480
− 変動労務費 60
− 外注加工費 40
− 外注物流費 30
− 在庫金利 10
=付加価値 380
   
− 固定労務費 100
− 減価償却費 90
− 事業資金の金利 20
=利益 170

変動費の事例

① 仕入先への価格交渉による材料費の改善

事例

手作業が多かった時代では、材料歩留の改善による材料費の削減効果は大きかったですが、機械化が進んだ現在では材料歩留の改善の余地は少なくなっています。そこで、仕入先を巻き込んで材料費を減少していく必要があります。

仕入先の一極集中化を止め、仕入先を分散させることで、仕入先の交渉力は弱まり、有利に価格交渉を進めることができる場合もあります。また、仕入先からの材料購入の頻度を今までよりも減らして、1回あたりに購入する数量を増やすことで、有利に価格交渉を進めることができる場合もあります。

しかし、価格交渉は、自己中心的な考えではなかなかうまく進めることができません。仕入先からすると、売上高の減少になりますので、仕入先にもメリットがないとうまく進めることができません。

おすすめするケース

仕入先が材料を運搬する運賃を負担している場合、購入頻度を減らすことで運賃が減りますので、その分、材料の購入価格を低くしてくれる可能性があります。価格交渉を進める時には、仕入先のメリットも考慮して進める必要があります。

② 仕入先の変更による材料費の改善

事例

仕入先との昔からの付き合いがあって、なかなか仕入先を変更できないという話はよく耳にします。
確かに、付き合いのある仕入先を変更することは容易ではありません。

一方、仕入先と特段付き合いがない場合でも、今まで購買担当者が他の仕入先からの購入を検討してこなかっただけという場合もよく耳にします。

特に、資源価格が高騰している現在では、少しでも材料費を抑える必要があります。損益計算書の材料費の割合は60%、70%ほどですので、材料価格が安い仕入先を選ぶことで、業績の大きな改善につながります。

仕入先の変更にはいくつかの注意点があります。まず、安易に安い方の仕入先に変更しないことです。

安さは魅力ですが、安い分、材料の品質が落ちる可能性がありますし、スイッチングコスト(仕入先の変更に伴い追加で発生するコスト)が高い場合には、仕入先を変更すべきではない場合もあります。

また、材料の納期や安定供給してくれるかと言ったことも考慮して仕入先を変更するかどうかの判断をしていく必要があります。

おすすめするケース

品質、納期、安定供給が仕入先変更前後で変わらず、かつ、スイッチングコストの発生額が仕入先変更による材料費の減少額よりも小さい場合には、仕入先の変更を検討する余地があります。

③ 作業非効率の本当の原因の分析による変動労務費の改善

事例

多くの会社では、製品1個つくるにあたっての作業時間が決まっています。決められた作業時間をオーバーしているようでしたら、その原因をしっかりと把握する必要があります。

現在は、機械化が進んでいますので、作業者の非効率な作業により作業時間がオーバーしているということは少なくなってきました。

決められた作業時間をオーバーする原因は、作業者以外の原因による要素が大きくなっていますので、その原因を把握し、作業時間の短縮化が図れるような工程内容の見直しが必要です。つまり、作業非効率の本当の原因を分析し、改善していく必要があります。

特に、現在、人件費が高騰し採用コストが上昇していますので、DX化も含めた作業の効率化により、不必要な労務費を削減する必要があります。

おすすめするケース

工程の見直しやDX化には費用が発生しますので、これらの費用が作業効率による労務費の減少額よりも小さい場合には、作業効率の改善を検討する余地があります。

④ 内製化による外注加工費の削減

事例

最近、物価の上昇がニュースを賑わしています。外注加工費も例外ではありません。

大手企業でも最近は、よく内製化の動きが見られます。内製化によるメリットがあるからですが、内製化によるメリットは、価格以外にも外注先の倒産リスクがなくなることや外注先の加工遅れがなくなるため安定した製品の生産ができることなどがあります。

もちろん、デメリットもあります。自社内にノウハウがない場合は、外注先のノウハウを簡単に利用できていましたが、そのノウハウを利用できなくなるというデメリットや外注加工費よりも内製化による労務費などの費用が大きくなってしまうというデメリットがあります。

おすすめするケース

自社内にノウハウがあって、内製化による労務費等の費用の発生額が外注加工費の減少額よりも小さい場合には、内製化を検討する余地があります。

⑤ 外注物流費の削減

事例

最近のガソリン価格の高騰により、外注物流費も高騰している話をよく耳にします。

例えば、今まで特急便を使っていた場合は、基本的には定期便にして、一部のものは特急便を使うという使い分けをすることで外注物流費を抑えることができます。また、配送頻度の見直しやハブ数の適正化などによっても外注物流費を抑えることができます。

おすすめするケース

外注物流費を削減しようとすると、販売先などが関わってきますので、販売先の協力を得ながら進める必要があります。特急便から定期便への切り替えや配送頻度の見直し、ハブ数の適正化について、販売先などの協力が得られる場合には、見直しを検討する余地があります。

固定費の事例

⑥ 正社員の生産性向上による固定労務費の有効活用

事例

固定費は、ヒト・モノ・カネという会社の資源に対して支払った費用です。正社員の給料は、毎月一定額支払われますので、固定労務費は、変動労務費のようにコストダウンではなく、正社員1人1人の生産性を高めることが目的です。1人1人の生産性を高めるためには、職場環境の整備が必要です。

職場環境を整備するために検討する項目例

  • 会社のビジョンが定められ、従業員にも共有されているか。
  • 1人1人にチャレンジのチャンスが与えられているか。
  • 困っていた時に必要なサポートが受けられる風土か。
  • チャレンジや達成した成果に対して正当な評価がされるか。

⑦ トータルコストで考える設備投資

事例

設備投資は、モノという会社の資源に対する投資であり、生産性を高めるために最新鋭の設備に投資するケースが多いですが、生産性以外にも検討すべきポイントがあります。

例えば、設備を導入する際には、初期投資額だけでなく、その後のメンテナンス費用、仕損じの発生に要するコストなど、トータルコストで検討することです。

初期投資額が安くても、その後のメンテナンス費用が多額であったり、仕損じの発生率が高く、余分に材料費や労務費がかさんでしまうケースがあります。このため、設備投資は、トータルコストで検討する必要があります。

まとめ

いくつか事例を紹介してきましたが、原価改善・原価低減は、緊急性、改善効果の高さといった観点から、優先順位をつけて、優先度の高いものから取り組む必要があります。また、原価改善活動は、1回やれば終わりというものではなく、継続的に取り組む必要がありますし、また、必要に応じて見直す必要があります。

改善効果の高いものほど、時間がかかりますが、ぜひ積極的に原価改善にチャレンジしてみてください。

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