任意監査について

このページの目的

  • 任意監査と法定監査の違いを理解すること
  • 任意監査の種類を理解すること
  • 任意監査の流れを理解すること
  • 任意監査のメリット・デメリットを理解すること

1 任意監査と法定監査の違い

任意監査とは、法律によって義務付けられた監査ではなく、主に中小企業等が任意に監査法人や公認会計士に依頼する財務諸表の監査です。任意監査は、金融機関、取引先、親会社、出資者に対して、対外的な信頼性を高める等のために行われます。

一方、法律によって義務付けられた監査は法定監査といい、代表的なものに、金融商品取引法監査と会社法監査があります。

  • 金融商品取引法監査:上場会社が受ける監査法人または公認会計士による法定監査です。
  • 会社法監査:資本金5億円以上もしくは負債総額が200億円以上の大会社が受ける監査法人または公認会計士による法定監査です。

法定監査は、会社が一定の条件を満たした場合、必ず受けなければなりませんが、任意監査は受けるかどうかは、会社の判断に委ねられています。

2 任意監査の種類

任意監査は、会社の多様な目的のために行われますが、以下の種類があります。

① 会社法監査に準ずる監査

会社法監査に準ずる監査は、金融機関、取引先、親会社、出資者からの要請で受ける監査です。非上場会社で会社法監査を受けていない会社等が対象になりますが、会計基準や財務諸表の表示が会社法に準拠しているかどうかという視点で行われる監査です。

② 「中小企業の会計に関する指針」への準拠性の監査

「中小企業の会計に関する指針」への準拠性の監査は、会社法監査に準ずる監査と同じく、金融機関、取引先、親会社、出資者からの要請で受ける監査です。

「中小企業の会計に関する指針」は、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の4団体が、法務省、金融庁及び中小企業庁の協力のもと、中小企業が計算関係書類を作成するに当たって拠るべき指針を明確化するために作成したものです。

「中小企業の会計に関する指針」によると、対象会社は、以下の会社とされています。

  • 本指針の適用対象は、以下を除く株式会社とする。
    (1)金融商品取引法の適用を受ける会社並びにその子会社及び関連会社(つまり、上場会社とその子会社や関連会社です)
    (2)会計監査人を設置する会社及びその子会社(つまり、会社法監査を受ける会社及びその子会社です)
  • 特例有限会社、合名会社、合資会社又は合同会社についても、本指針に拠ることが推奨される。

③金融商品取引法監査に準ずる監査

金融商品取引法監査に準ずる監査は、法律に基づいた監査ではありませんが、株式公開準備会社が受ける監査です。上場後は、金融商品取引法監査を受けることになりますが、上場前に金融商品取引法監査と同水準の監査を受けることになります。

3 任意監査の流れ

任意監査は、一般的には以下の流れで行います。

① 短期調査

監査法人または公認会計士(以下、公認会計士等)は、任意監査の受嘱の可否を判断するために、必要に応じて、短期調査を行います。公認会計士等は、各種資料の徴求やヒアリング等を行い、任意監査を受嘱して良いか否かを判断します。

② 契約受嘱

短期調査の結果、問題なければ、公認会計士等と契約を締結することになります。

③ 監査計画の策定

公認会計士等は、短期調査の結果等に基づいて、リスクを評価して、詳細な監査計画を立案することになります。

④ 監査の実施

公認会計士等が監査を実施します。契約書や請求書等の証憑資料と会社数値との突合等の実証手続、質問を中心とした分析手続、内部統制の確認、取締役会議事録の閲覧等を行います。会社担当者は、資料の提出や質問対応などをすることになります。

⑤ クロージング

公認会計士等が監査結果の報告等を行います。

4 任意監査のメリット

中小企業が任意監査を受けるメリットは、自社の財務諸表の透明性を証明できること、金融機関、取引先、親会社、出資者等の利害関係者に対して、信用力の高さをアピールできることです。

① 自社の財務諸表の対外的な信頼性を高めることができる

任意監査を受けると、自社の財務諸表の対外的な信頼性を高めることができるというメリットがあります。会社が利害関係者に対して、自分で作った財務諸表は正しいと主張しても、なかなか信じてもらえません。しかし、会社から独立した第三者である公認会計士が財務諸表の信頼性を証明することで、対外的な信頼性を高めることができます。

任意監査を受けることで、例えば、対金融機関では、金融機関が融資をする際の判断材料になり、融資金額、利率、融資期間、返済条件等の決定に、適切に評価されることが期待されます。対出資者では、投資先の損益状況や純資産状況を把握し、投資の判断材料になることが期待されます。

②有効な内部統制の構築に寄与する

任意監査では、必要に応じて内部統制も確認することになりますので、任意監査の過程で改善すべき内部統制を発見した場合には、その都度、改善のためのアドバイス等を行います。これにより、会社にとっては、有効な内部統制を構築することができるメリットがあります。

内部統制はなぜ重要か?

財務諸表監査では、日々の膨大な取引を全て確認するわけではありません。内部統制が有効に機能していることことを前提に、サンプリングベースで監査を進めます。内部統制に不備があると、適正な財務諸表を作成することはできませんので、監査は不可能になります。

金融機関も出資者も「内部統制が有効に機能していない=適正な財務諸表は作成できない」ということを知っているため、対金融機関、対出資者においても内部統制は重要です。

③ 経理部の能力向上に寄与する

任意監査では、主に経理部と対応することになります。任意監査を通じて、経理部の担当者の会計処理の理解や知見が蓄積されるようになり、自社内で財務諸表に精通した人財の育成が期待されます。

5 任意監査のデメリット

任意監査は、手間やコストがかかるというデメリットがあります。

① 手間がかかる

任意監査では、様々な資料を確認することになりますので、会社担当者は、その資料を作成したり、提出したりする手間がかかります。また、内部統制を確認するために、経理部ではなく他の部署の担当者にもヒアリングすることがあるため、全社の協力が必要になります。

② コストがかかる

当然ですが、任意監査を依頼すると、金銭的な負担もかかります。会社側の資料の作成状況や提出状況が悪いと監査が長引くだけでなく、場合によっては追加のコストが発生する可能性があります。

まとめ

当事務所でも各法令に準じた任意監査を行なっています。

任意監査を受嘱する際は、試算表等を基に受嘱可能か否かを検討させていただいていますので、時間的余裕を持ってご連絡ください。

また、会社の規模やリスクの程度に応じて複数の公認会計士と提携して任意監査を実施します。

まずは、お気軽にご相談ください。

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